厭世メモ

メンヘラフリーターの気になることメモ帳

アウトレット探検記②

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ガラスケースの中には数本の時計と、ブレスレット、リングが納められていた。
どれも本当に美しい。そして、かっこいい!
一つ一つ身につけてみる妄想もキュンキュンと湧いてくる。落ち着いたシックなデザインや、ちょっとお茶目で洗練された色味のかわいいデザインもあった。

私は、時計に関しては細身の方が好みだ。大きくてゴツめのも確かにかわいいが、私の腕は華奢には程遠いため男に見間違えられるのがコワイ。そして、少し重いのもネックだ。
さらに、今はニートなもののもう少しして働き始める事を考えると女性らしい細めの、程よい主張をするデザインがよい。

ガラスケース内には細身の時計が3種類あった。ビビッドなブルーと文字盤のホワイトが美しい左の時計。蛍光オレンジがキいており、数字がブランドロゴになっている中央の時計。そして、ミルクティーのベルトがシックで大人っぽい右の時計。ベルトの太さは3種類どれもほぼ変わらない、1㎝ほどだ。
どれも美しいし、たぶん私に似合う。

ヨシと思い、店員さんを呼んで3種類を試着させてもらうことにした。
ガラスケースの上に並べられて、光を受ける時計は本当に美しかった。

まずは、左にあるブルーの時計。数字とベルトが同じ色で揃えてある。かわいい。
スカイブルーは爽やかながら上品さも兼ねている。普段クラシックで大人しい私のファッションにも一点キュートさをプラスしてくれるかもしれない。はずす。

次は中央の蛍光オレンジの時計。少し眩しい感じもするが、これからの夏主役になることは約束してくれそうだ。ブランドらしく元気で、お茶目さがある。文字盤はホワイトなので数字も読みやすいし、色白の私の肌とも釣り合う。捨てがたい。はずす。

最後は右のミルクティーの時計だ。これが一番、普段の私らしい。
私のファッションにはベージュやカーキといった落ち着いた色が多いし、仕事場につけていくならこれが一番無難ではある。色もクラシックで安心感があり、他のファッション小物と仲良くやってくれそうだ。ううん、悩むなあ。はずす。

どれもそれぞれかわいい。
3種類全てに手に取る意味があり、どれも必要な要素だ。そして、何回も思う、私には3種類どれも似合うんだ!捨てられない!
では落ち着こう。少しずつ考えを進める。減点法でいこう。


これは時計だ。毎日身につける。毎日身につけるものにファッションをいちいち左右されるわけにはいかない。私がこれまでに選び抜いたファッショングッズ達とも仲良くしていただかねばならない。
それには少し、蛍光オレンジは奇抜かもしれない。うん、よし、蛍光オレンジくん、残念だがよい人に主人になってもらいなさい。

残る2種類はブルーとミルクティー。キュートかシックか。冒険か調和か。かわいいか美しいか。
時計としての機能はどうだろう。針はそれぞれベルトと同じカラー。文字盤のホワイトからはっきり浮き出て見えるが、パッとした見やすさはやはりブルーのほうが上だろうか。
自分のファッションとの兼ね合いはどうだろうか。ミルクティーはこれまでの私らしく、見た目穏やかとされる私の雰囲気にも合っているだろう。(ちなみに、見た目が穏やかなだけで中身は呆れるほど気が強くよく人をガッカリさせている)

あとは、私が時計に何を求めているかだろうか。
時間がわかりやすいのは大前提だが、それはどちらもクリアしている。今、私のファッションに足りないものはなんだ?どんな女性になりたいんだ?

私はブルーにした。

店員のお姉さんにその旨を伝え、私はふうと一息ついた。ああ、大きな決断をした!
会計に向かうお姉さんの背中を見つめながら満足感がポクポクと温かい音とともに湧き上がってくるのを感じていた。

私は「キュートな大人の女性」になりたいと思った。
澄ました顔をしながらたまに微笑むような大人しい女性も美しい。しかし、私はつい羽目をはずしてしまうような、面白いときたまあに声をあげて笑ってしまうキュートな女性を目指したい。
きっとそんな女性は小物も一点、ついキュートなものを選んでしまうに違いない。
そしてその一点を見てふふ、と笑う。こぼれてしまうのだきっと。かわいくてうれしくて。 

店員のお姉さんが、会計を終えて新しい仲間が入った袋を手渡してくれた。

袋を見つめて思う。
これからはあなたも、私を「キュートな大人の女性」へ向かってプロデュースしてほしい。

爽やかで上品で、つい笑みがこぼれるキュートさを、私自身が手に入れたような気になった。